秘密
SIDE.雨宮好美
「雨宮先生」
好美が、生徒達の提出物であるプリントの束を揃えて数え終えた時だった。
話し掛けてきたのは体育科教諭の橋本順だ。手には財布と携帯電話を持っている。
それは四限の時間になったばかりで、生徒達はまだ授業を受けている。
教諭達は自身の授業がない時間帯に昼食を取るようにと言われている。橋本は今から昼食を取りに行くらしい。
「どうかしましたか、橋本先生」
「昼食がまだなら一緒に食べませんか。車も出しますよ」
橋本は、好美が結婚と出産を控えていることを知らない。
好美があと半年もすれば休暇に入ることを、校長や教頭、仲の良い保険医達にしか話していないからだ。
橋本が好美に「そういう好意」を寄せているのを、好美は知っている。
それは周囲の眼から見ても解る程、あからさまに好美を食事や買い出しに誘ってくる。好美は毎回その誘いを断るというのに、橋本は怯むことなく未だに誘ってくるのだ。