秘密
SIDE.雨宮好美
迷惑ではないけれど、困っている。
それが好美の本音だった。
橋本は独身で、いつもジャージ姿の少し冴えない男だ。歳は三十路になったばかりである。
そんな男が積極的に好美に話し掛けてくるため、周囲の教諭はそれを好奇な眼で見ては陰口を叩く。
好美は仲の良い保険医の大宮鈴にこれをよく相談している。
鈴は好美より四つ歳が上で、好美がこの高校に赴任してきた時にはもう保健室にいた。
その頃から、好美は鈴を頼れる姉のように慕っているのである。
結婚が決まったことも妊娠したことも、好美は一番に鈴に話したが、悠平との関係だけは話すことができずにいる。
「ごめんなさい。お弁当を持ってきているし、まだしなければならないことがありますので」
丁寧に断る好美に、橋本は強引に誘うことはせず「そうですか、すみません」と一言謝り、職員室を出た。