秘密
 

SIDE.雨宮好美
 



 
「もちろん断ったんでしょう?」
 

「ええ。だから私はここへ来ることができたの……」
 

 
湯を沸かす傍ら、鈴はコーヒーカップとスプーンを出した。その様子を、ただひたすらに好美は見ている。特に何かを思うわけではない。
 

 
「貴女には旦那様がいるということを、橋本先生は知らないから仕方がないわね」
 

「もうお腹も目立ち始めているのに……。気が付かないのかしら」
 

「男は女の変化に気が付かない、単純な生き物よ」
 

 
鈴がくすくすと笑う。
 

門田君は私が髪型を変えれば気が付くし、アイシャドウの色を変えればそれにすら気が付いてくれるわ。
 

胸の内では鈴に向かってそんな風に言い返しながら、好美は大人しくコーヒーがカップに注がれるのを待っていた。
 

 
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