秘密
SIDE.門田悠平
珠子に嫌な想いをさせてしまった。最初からこんなに意味のないことをしなければ良かったのに、と思ってしまう。
悠平は、まるでこれが珠子の作る弁当を食べる最後の機会だとかみ締めるように箸を握った。
「タマ」
「何?」
「先生な、8月いっぱいで教師を辞めて、9月からは産休に入るんだ」
「……え?」
珠子が驚いていることも、悠平にはよく解った。悠平自身がそうだったように。
婚約者がいることに関してはそれほど驚かなかった。先生は素敵な女性だし、交際している相手くらいいると、高を括っていたからだ。
実は、心の奥で期待していた。俺は珍しく自惚れていた。
もしかしたら、婚約破棄になる日が来るかもしれない。
そうしたら、俺は先生の本当の恋人。
「そうなんだ……。知らなかった」
「先生、まだ校長や保険医にしか話していないらしいんだ。だから、内緒な」
珠子は頷いていた。