ピアス
秋江さんの葬式は、とても淡泊なものだった。喪主は当然、夏江さんがつとめた。わたしは、初めて二人が孤児なのだと知った。
近頃にしては珍しい、しきたりを重んじられた古風な葬儀は、小母さんたちの思いだった。
遺族に一礼、祭壇にも一礼。香をつまみ、指先を横にして額にいただく。香炉にくべ、二祭壇(にさいだん)に向かって合掌する。
まだ若いのに……可哀想にねぇ。夏江さんだってまだ十五かそこらでしょうに。身寄りがないのにどうするのかしら……。
背後で、小母さんたちの哀れむ声が聞こえた。
お香の香りは、お菊や百合の花の香りと混ざりあい不快な香りと化して、わたしの鼻腔をくすぐる。
何度目かのお香の香りは、やはり慣れることはなく、私は頭痛がした。
お焼香が終わり通夜ぶるまいの最中、皆で秋江さんの偲んでいるとき、夏江さんは奥に引っ込んだっきり姿を消した。
一緒に、秋江さんが唯一残した遺品――ワンピースと数百万の通帳も消えていた。
野辺送(のべおく)りは、秋江さん得に仲のよかったわたしとわたしの家族だけが加わった。
初めて眸にする放鳥籠(ほうちようかご)が妙に印象に残っている。
近頃にしては珍しい、しきたりを重んじられた古風な葬儀は、小母さんたちの思いだった。
遺族に一礼、祭壇にも一礼。香をつまみ、指先を横にして額にいただく。香炉にくべ、二祭壇(にさいだん)に向かって合掌する。
まだ若いのに……可哀想にねぇ。夏江さんだってまだ十五かそこらでしょうに。身寄りがないのにどうするのかしら……。
背後で、小母さんたちの哀れむ声が聞こえた。
お香の香りは、お菊や百合の花の香りと混ざりあい不快な香りと化して、わたしの鼻腔をくすぐる。
何度目かのお香の香りは、やはり慣れることはなく、私は頭痛がした。
お焼香が終わり通夜ぶるまいの最中、皆で秋江さんの偲んでいるとき、夏江さんは奥に引っ込んだっきり姿を消した。
一緒に、秋江さんが唯一残した遺品――ワンピースと数百万の通帳も消えていた。
野辺送(のべおく)りは、秋江さん得に仲のよかったわたしとわたしの家族だけが加わった。
初めて眸にする放鳥籠(ほうちようかご)が妙に印象に残っている。