電話越しの君へ


冬が近付いてきた頃、
唐突に綾瀬は俺に聞いてきた。



「杉本ってさー
好きな子とかいんの?」



いきなりの問に俺はしばし黙りこんだ。



彼女はそれを勝手に肯定と受けとめ、俺に誰が好きなのか吐かせようとした。



そこで俺は思いだす。



――…綾瀬にも好きな奴がいるんだよな?



変な対抗心が芽生えていく。



気付いた時にはもう、俺の口は勝手に動いてしまっていた。



「……っるせーな
いるよ、俺にも超好きな奴が一人。でも綾瀬には関係ねぇだろ」



ちっと舌打ちをした後、綾瀬の顔を見て、俺はしまったと思った。



傷ついたような顔をした綾瀬に
俺はどうすることも出来なかった。



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