電話越しの君へ
それから約一週間。
学試を明後日に控えた俺は、居間で単語帳をめくっていた。
俺が目指すのは二組だ。
いくら勉強してもしたりない気さえする。
ふと、ケータイのバイブ音が鳴り響いた。
「お兄ぃー電話ぁー」
間延びした妹の声に顔を上げる。
「……って誰この"綾瀬くるみ"って!!!やだ!!お兄にまさかの彼女がっ!?」
青い光で表示された名前を妹が声に出した途端、親父もおふくろも一気に顔をあげる。
「ちょッ…おま、返せッ」
慌てて引ったくるようにケータイを取り返すも、妹の詰問は終わらない。
「お兄を彼氏にするなんて物好きな彼女さんだねぇー!!ねぇ誰!?くるみさんって!!」
「待ってなさい!!今、慎也の集合写真持ってくるから!!」
しかもおふくろまでダッシュで走ってゆく始末。
「待て!!母さん!!アルバムはこっちに仕舞ってるぞ!!」
!!?
親父まで!?
「あたしも見るっ」
妹もダッシュで走っていって居間には俺一人になった。
弁解しようと走りかけ、しかしケータイに出るのが先だと気付く。
はぁ…
なんかややこしいことになってきた……
ピッ……
「もしもし」
電話に出た声は、図らずも少し不機嫌な声になった。