電話越しの君へ
帰り道、廊下の先に見知った姿をとらえる。
目の前には綾瀬。
俺には気付かない。
下駄箱の靴を取る仕草ひとつにも胸がギュッと絞めつけられる。
夕日の逆光で暗く影になるその姿に目を細めた。
………言わねぇと。
俺の本当の気持ちを。
偽りも嘘も俺を縛る鎖にしかならないことはもう、身に染みて感じていた。
あとは、伝えるだけだ。
校庭に向かう綾瀬を小走りで追いかける。
サッカー部の掛け声が
夕日に反射する。
そして、風を切る、一筋の轟音。
「………綾瀬っ…!!」
気付いたら身体が先に反応していた。