空白の時間=友情>愛情

母親

ゴールデンウィークが間近となり、父兄との個別懇談が始まった。

広沢翼の母親を目の前にして、オレは緊張していた。



「広田くん、いえ広田先生。ずいぶんご無沙汰してます」

「はい。10年以上お目にかかってないと思います。お変わりないですね」

「いいえ、もうすっかりおばさんよ(笑)」

広沢翼の母・真由美は、40代半ばには見えない美貌の持ち主だ。

「賢二さんのことでは…迷惑かけましたね」

「いいえ、迷惑だなんて…」

「翼の担任が広田くん、ごめんなさい…広田先生でよかったわ。翼も喜んでますよ。よろしくお願いします」

「はぁ。こちらこそよろしくお願いします。翼くんは部活も頑張ってますし、成績も上位です。クラスのムードメーカー的な存在で、何もご心配はいらないと思います」

「ありがとうございます。主人はもうずっと中国ですの。めったに日本に戻りませんから、母子家庭みたいなもので…」

「それは知りませんでした。まあ、翼くんなら大丈夫ですよ」

「思春期の男の子ですから、女の私では手に追えないこともあると思うの。いろいろ相談に乗ってあげてね、広田くん」



結局オレは…広田くんか…。

終始、圧倒されっぱなしで父兄懇談は終了した。
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