空白の時間=友情>愛情
存在しない少年

葬式

中国との合弁ビジネスを数多く手掛けた広沢寛治氏は地元の名士だった。

広沢氏が上海で不慮の事故死を遂げたニュースは新聞やテレビなどでも報道された。

告別式に出席したオレは、泣き崩れる真由美夫人に引きかえ、涙ひとつ見せず気丈にふるまう翼に関心した。



後日、賢二と翼の兄である広沢隆一から連絡があり、学校近くの喫茶店で待ち合わせた。



「はじめまして。広沢隆一です」

「はじめまして。広田直紀です」

もちろん存在は知っていたが、賢二の失踪当時…隆一氏は東京の大学に通っており会うのは初めてだった。

「広田先生は、賢二の親友だったとか…」

「はい」

「また、翼が学校でお世話になっております。ところで、父がこのようなことになり、翼の母親も大変力を落としておりまして…」

「お察しします」

「私、東京で銀行員をしております。父の会社の運営は当面、役員の方に任せますが、いずれビジネスを引き継がねばなりません」
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