空白の時間=友情>愛情

友情

「夏休みのこの時間に教室に来るヤツはいるかな?」

賢二がいたずらっぽく笑った。

「そりゃ…」

次の瞬間、直紀の唇はふさがれていた。



-ファーストキスもこんな風に突然だったっけ…。



時間が止まったような長いキスだった…。



「ナオ、これが最後のキスだ」

「ん?」

「オレは今日中にこの町を離れる。そして、二度と来ることはないだろう。ナオとももう会えないよ」

「やっと会えたのに…」

「今のオレは全く別人格の人間だ。ナオは結婚して幸せな家庭を築こうとしてる…。オレの家族にとっても、広沢賢二はいない方が都合がいい」

「しかし…」

「それでいいんだ」

「それでもオレに会いに来てくれたじゃないか…」



「オレがオレを捨てても…オレを捨てないでいてくれた人だからだよ…。オレは気づいていた。オレにとっては愛情でも、ナオにとっては友情だった。でも、愛情を上回る友情で包まれたオレは幸せだったよ」





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