クリスタルライン
リョウは、再び私を抱き寄せた。
じゃあ抱きしめてくれた時、温かいのは……どうして?
服の温もり?錯覚…?
ううん……違う。
たしかにこのぬくもりは、彼。
私はそう信じてる。
「杏里、ごめん。ホントにごめんな、杏里……っ。一緒にいてやれなくて。すぐ近くで守ってやれなくてごめん……っ」
何度も私の名前を呼んで
リョウは「ごめん」と何回言っただろう。
そして究極の言葉はこれだった。
「生きろ、杏里」
私の心臓がドキリと鳴った。
「お前は生きなきゃダメだ。生きて、俺がやりたかったこと、やりかけだったこと。お前にはちゃんとやっていってほしい。家族や友達と笑い合ったり、どっかを猛ダッシュで走って苦しいほど息切らしたり、家族と飯食ったり、空見上げたりさ。……こんなんさ、生きてたら全部、やろうと思えばどれも簡単に出来ることなのにな。何不自由なく生きてたら分かんねぇことだけど、きっと“普通”ってのが、一番難しくて尊いことなんだよな。今ならそれが、何となく分かるような気がするんだ。…って、何格好付けたこと言ってんだ?って感じだよな」
「リョウ……」
「ああ、あとさ。杏里には夢も追って欲しい。そんで叶えてもらわなきゃな。これ、一番の俺の望み」
私は、小さくうなずいた。
「分かった。でも、私……リョウのこと忘れなくてもいいよね?」
こんなことを聞いてしまう、私。
ごめんねリョウ…。
こんなこと聞かれても、答えに困っちゃうよね。
「俺は……忘れてほしくないよ」
「え?」
「忘れてほしくない。いつまでも、覚えててほしい。俺だけを想っていてほしい。でも、きっと……」
リョウは自分の言葉に、静かに首を横に振る。
そして続けた。
「きっとじゃない。絶対、杏里は幸せになるよ。俺のいない世界でも幸せになれる。……でもさ、これは俺の勝手なお願いだけど……その時までは俺のこと、覚えててほしいかな」
その時まで?
私はその言葉の意味をよく理解できなかった。