オリオンの砂時計
★ ★ ★
いつまでこんな非生産的な生活つづける気だよ、いい加減止めどきなんじゃねぇの?
布団の中で寝返りを打ちながら、自分を説得する。
とりあえず生きてりゃいいんだよ。
物を食べることになんの意味がある?
美味しいと感じる感覚が麻痺して、空腹や満腹を感じる感覚が壊れた今。
壊れたから食べなくてもいいものを、いちいち口に突っ込む。
美味しくもない、しかも口にしているうちにだんだん意識が朦朧としてきて、アブナくなってくる。
カッターをゴソゴソと探しはじめる。
おかしいな、2日前にはここに入れたような気がするのに。今日は見つからない。
ひどく気が沈む、いっそのこと包丁でやろうか、と考えるけど、他の人が食べるものを切るのに血の味がするってのはさすがにマズイか、そう思って止める、止めるんだけど、切らないとどうしても意識がシの方へ引っ張られていってしまいそうでどうしようもない。
あと何日、正気で生きていられるだろうか。
今、二つの部屋を使っている。就職して出ていった兄の部屋と自分の部屋。
自分の部屋の机の引き出しにカッターを見つけた。
一週間飲まず食わずの人が一切れのカビの生えかけたパン屑を見つけたときのように、とっさに手に取り刃をだした。
腕にいつものように叩きつける。
血が浮き出てきて、球状に盛り上がっていく。
その赤い球がこぼれ落ちそうになったから舌で舐めてみた。
生きてること確認するみたいに。
血は美味しくも不味くもなく、金属的な味もしなかった。
味覚がぶっ壊れたらしい。
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