嘘から始まる恋
「理子、もう来てたんだ」
ガラッとドアを開け教室に入ってきた成瀬くんは、私が携帯を持っているのを見つけると急いで取り上げた。
「出た?」
「…ううん」
慌てる成瀬くんを見るなんて初めてで、何故だか嘘をついてしまった。
安心したような息をつくと携帯の電源を落とした。
「電話、ずっと鳴ってたけど出なくていいの?」
「あー…、うん。また後でかけ直すから」
ズボンのポケットに携帯をしまい、何事もなかったように過ごし始めた。
何か隠してるのかな…。
賭けてるって何を?
「理子?昼、食べないの?」
「食べるよ!成瀬くん待ってたんだよ」
「ごめん、職員室呼ばれて」
いつも通り話す成瀬くんに、何か引っ掛かりつつも私もいつものように話す。
さっきの電話、出るんじゃなかったな…。