冬恋。【完】
「東!」
「乗せてくから早く乗れ。犬は前のカゴに入れていいから」
声のトーンは低いまま。
それに私の言葉は無視ときた。
乗せていくって、自転車に二人乗りってこと?
東、そんなに体力あったっけ……。
多少不安な面もあるけど、荷台に乗り、東にしっかりつかまった。
「いくよ」
暑い中、バランスをほとんど崩さないで自転車をこぐ東。
なんでそんな声は怒ってるくせに態度だけは優しいのだろう。
しかし海さんには悪いことしたよね。
私の頭の中は謝らないと、という気持ちでいっぱいだった。