通行人B
一話『現実は一つだけ』

俺は出会った

その日は、GW前のよく晴れた日だった。
連休前の解放感に浮かれながらも、俺はいつものように下校していた。
部活帰り、途中で友人たちとGW中にまた会おうと約束してから別れ。

そういえば、新しいCDが出てたと思いだし、店に寄った。
その場所で、悲劇は起こる・・・――――――。



お目当てのCDを探して、棚の間を練り歩いているとき。
俺の耳にお上品とは言い難い笑い声が届いた。
見れば自分の身分を誇示する、揃いも揃った同じ黒服―――平たく言うと学生服―――の少年集団が。
万引きでもしてんのかな・・・・・・。
俺はぼんやりと思いながらも、普通に無視する。

こういうことには関わらない方がいい。

それが、この世の中を渡って行く上での賢い選択というものだ。
面倒事には極力関わりたくないものが人情てもんだろ?
恐らく、周りの連中も同じことを思っていると思う。

けれど。
そこで、予想外のことが起きた。



「何をしているんだ、君たちは」

突如、店内に響いた柔らかなテノール。
歌うように滑らかで。
しかし、しっかりとした声は。
少年たちの悪事を。的確に糾弾する。
「万引きは立派な窃盗だ。そんなことをして、君たちの良心は痛まないのかい?」
実に立派なご発言。
しかし、俺は内心でため息をついた。

馬鹿な奴もいるもんだ。
わざわざここでそんなこと言わなくても、どうせ店の出入り口で引っかかるんだからほっときゃいいのに。
それであいつらがケイサツにつかまろうとどうでもいいじゃんかよ。
どうせ関係ない連中なんだし。

いやにクサイ、この馬鹿なお人よし。
一体、どんなツラしてんだ・・・・・・?

俺は純粋な興味から、ちらりと覗き見て―――――――――――絶句した。

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