ひねもす月
キャー


言葉にならない声をあげながら逃げ回るミナを、カナタは慎重に追いかける。
ぬるっとした湖底に、靴を履いたままで助かったと、しみじみ思った。


アー、キィヤーァ


歓声をあげながらも、水に当たるまいと軽快に駆ける足取り。
いつミナが転ぶか、カナタの方がドギマギしてしまう。


「あ、こら!」


ミナはどんどん深みに向かって行く。
カナタに水しぶきを投げかけながら、どんどんと、岸から遠くへと後退って行く。


「危ないからそっちはダメだってば」


引き戻そうにも、顔にかかる飛沫に、目を開けているのも一苦労だ。
すり抜けようとするミナに、必死で手を伸ばす。


「あ!!」


叫んだのは、カナタだったか、ミナだったか。

咄嗟に、身を投げ出すように思い切り手を伸ばした。


それは一瞬の、それでいて、濃密な出来事。


案の定、足をとられて、ミナが後ろに倒れていく。
頼りなげに浮いた手の先を、カナタの指がかすめ、捕らえた。

体にかかる、強い引力。


一気に、引き寄せた。




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