ひねもす月
その気持ちに応えようと、真剣に覗き込む。けれど。

書き終えて、誇らしげにこちらを見上げるミナに、カナタは内心、すっかり弱ってしまった。


キキ……?
ひ、み、つ……。


「あ!わかった!!
ひみつキチ!!」


パチパチパチパチ


若干解読に時間がかかり過ぎたが、ミナの拍手と笑顔に胸を撫で下ろす。


「秘密基地かぁ……。うん。確かにこれはみんな気づかないよなぁ」


ここを秘密基地にしよう、ということなのか。
それとも、ここがかつて、ミナとダイチの秘密基地だったのか。

そんな疑問が頭をよぎった。
でも。
きっと、後者だろうなと思いつつも、訊くことはできない。

深く考え込まれたら……。
本当のダイチを思い出すきっかけになってしまったら……。

パンドラの箱だ。


「あ、ミナ…………わっ」


引き留める間もなく、パシャパシャと湖に入り込み、パシャリ、手にすくった水を投げかける。
ひんやりと冷たい、澄んだ水がカナタを濡らした。

火照った肌に、さわやかな清涼感が心地良い。


「お返しだ!」


ザバザバと水をきり、一掬い、ミナをめがけた。

浅瀬はまるで川底のように石だらけで、苔むしている。
うかつに歩くと、滑って全身ずぶ濡れになってしまいそうだ。


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