ひねもす月
「さて、次、行こっか」


いつか、本物の水族館に連れて行ってあげたい。

どうせなら、無謀と言われても今日、挑戦してみれば良かったのだろうか……。

そんな思いが、込み上げた。


「あ、ほら、カメもいるよ」


岩のようなものが、日光のかわりだろうか、オレンジ色の照明を当てられ、優雅に青菜をはんでいる。

そのまわりの水槽には、トカゲ、ヘビ、ウーパールーパー。


「ミナは、もし飼うなら何がいい?」


雑談のつもりでそう言えば、ミナはパッと顔を輝かせる。


「もし、だよ?ホントには飼わないよ。ばあちゃんに訊かないで飼えないでしょ?」


慌てて否定すれば、あからさまにがっかりした様子。
それでも、いくつかの水槽を見比べたあと、さっきのクラゲを指差した。


「え……家で飼うなら、だよ?」


あんなの、家にいたら落ち着かないじゃないか。
何を食べるのかもわからないし。


けれど、ミナはまた、「うん」とばかりに力強く頷く。


よっぽど好きなのだろう。
理由が知りたい気がしたが、喋れないミナにそれは無理な相談だ。


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