ひねもす月
「じゃあ、さ。
あっちは?」


クラゲなんかに執着されたらたまったもんじゃない。

カナタはスッと別のコーナーを指差した。


「ぅああっ」


独特な歓声をあげ、ミナが思惑通り、小走りに駆け寄る。
それに驚いたのか、チッと小さく鳴いて、リスはケージの中を走り回った。

田舎に住んでいるからと言っても、野生の動物なんて滅多に合わない。
猪やら狸やらは結構いるらしいけど……リスがいるという話しは、ほとんど聞かなかった。


「シッポがフワフワしてる。かわいいね」


隣には、ウサギやフェレット、ハムスター。
小動物のコーナーらしい。驚いたことに、猿までいた。


少し離れた場所には鳥が、さらに棚を隔てた向こうには子犬や子猫が。
様々な広さのケージに入れられ、壁づたいに並んでいる。


「おにいちゃぁん」


ミナは、手をふったり、ガラスごしに指先でじゃらしてみたりしながら、楽しそうに回っていく。


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