光の子



そのまま、指をおろして、青あざのある頬をなで、

くちびるの端の切り傷をなぞった。



目を閉じてしまいそうなほど、心地良いい。




「痛そう……。
矢楚は、サッカーの虜なんだね」 



知也が、サッカーでケガしたらしいよと広香に言ってくれたおかげで、
広香はそれを信じたようだ。


ここ二ヵ月、これまでに見たことのないケガが矢楚に増えて、不安だったに違いないが、


広香は、根掘り葉掘り聞くことはしなかった。



母親の波乱の人生に寄り添って生きてきた、広香らしいあり方だと、

そんな広香を、矢楚はいじらしく感じた。


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