光の子


二百メートルに少し足りないくらいの外周を、十周したところで、ストレッチをしてクールダウンする。

深呼吸器すると、二月の凍り付いた夜風が肺の奥をくすぐり咳をさせた。

オレンジ色の街灯が、視覚的なぬくもりを辺りに広げている。
時計は待ち合わせの七時を少し回ったところだ。
ちらほらと、帰宅する中高生が道を行き、車も数台通り過ぎていく。

車種や車の色を聞いておけば良かった。
悔やんだその時、黒い軽自動車が横付けされ、ハザードが点滅した。

助手席の窓が開いて、沙与が顔を出す。
二人は互いに声をかけることなく、矢楚は車の後部座席へ乗り込んだ。

車内の空気が、冷えた頬を暖かく包む。

「よろしくお願いします」

矢楚は、運転席の青年に頭を下げた。



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