光の子
広香は、泣きじゃくりながら、できない、と首を横に振った。
いつもは強い光が宿る矢楚の目が、雲に覆われたように、鉛色になっていく。
矢楚はそれでも、懇願するように広香を抱き締めた。
「いやだよ、広香」
抱き合う心地よさと、引き裂かれる魂の痛み。
広香は、気が遠のいてしまいそうだった。
必死に、話そうと思っていたことに頭を集中させる。
「矢楚。
たくさんある星のなかでも一番輝いている、そんな選手になって。
私、矢楚がそうなるのを見てるから」
「いちばん傍で見ててよ」
「私、これ以上、自分を卑下したり嫌いになりたくないの。
矢楚の傍にいたら、矢楚が一流になる日を、私は晴れ晴れとした気持ちで迎える自信がない」
矢楚は、それでも広香を抱く腕を解こうとしなかった。