光の子



広香がいる学校で、その気配の中で、

オレは柴本亜希を傍らに連れる。



そのまなざしに、そんなオレが映りこむとき。

広香はどう思うんだろう。



付き合っていた時も、オレは自分では知らず、広香を苦しめていた。

桜の下で泣きじゃくった広香。


また、苦しめるのかな。

それとも、これで本当に解放してあげられるのかもしれない。



手を離す以外に、何もしてあげることがないと悟った、あのキスを思い出していた。



広香のくちびるを、宝物のように大切にしてきた。
見つめるだけで、指で触れることすらせずに。



矢楚は、頭を軽く振って感傷を追い払う。


柴本の手をとることを決めたんだ。




矢楚は、いま自ら、広香と自分の明日を遠く離つ海流にのった。










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