光の子
大きな手が広香の頭を包む。
矢楚の眉、きれいな形。
見惚れている間に、くちづけられていた。
大きくて柔らかな、矢楚のくちびる。
矢楚はうっとりとくちびるを開いた。
広香は目を閉じた。
なんだか自分が、急に液体になった気がした。
矢楚の中へ流れ込んでいく。
とめどなく。
矢楚は渇いた人が水を求めるように、広香のくちびるを放そうとしなかった。
交ざりあいすぎて、自分がどこにいるか、分からなくなる。
思わず、矢楚の耳を掴んだ。
矢楚は応えるようにくちびるを離し、親指で広香の口を拭う。
存在を肌で確かめるように、広香の前髪を撫で、頬に触れ、鼻をすりあわせた。
二人の吐息が足元に降り積もり、夜が幸せに色づいていく。
「あ、広香、いいもの見つけた」
矢楚が西の空を指差した。
膝立ちしたまま、広香は指の先を見た。
浄く静かに金星が瞬いていた。
胸が澄み渡っていく。
矢楚は広香を後ろから抱きしめると、
オレの膝の上においで、と広香を抱いたまま地べたに腰を下ろした。