シュガースパイスな君
琥珀がどこかへ行ってしまうような気がして、強く、その手を握り締めた。強く握り締めすぎたのか琥珀は痛みにその顔を歪めた。
でも、力を抜くことなんて出来なくて…。
そこで気付いた。琥珀はおれに何かを伝えようとしている。

そして耳を澄ましたら…

“大丈夫…あたしはここにいるよ。どこにも行かないよ…。”

そこで目が覚めた。

目が覚めたのに、目の前は暗いまま…。

「……琥珀…?」

抱き締められているということに気付いて、その愛しい名前を呼ぶ。
「…ん…。」
琥珀は涙に濡れたその瞳を開く。
その涙に触れた瞬間、自分の中に実体を得ぬ何か大きなものが流れ込んでくる気配がした。

「……はれ…大地…………?」

遠くでおれを呼ぶ琥珀の声が聞こえる。

そのあとのことは憶えてない。

ただおれは混沌の闇の中を彷徨っていた。

多分これが、記憶の狭間だったんだろう。

つらく苦しいその暗黒の空間から、おれを救ってくれたのは、言うまでもなく琥珀だ。


【琥珀Side】

大地を抱き締めて眠っていたら、大地に名前を呼ばれた。



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