風に揺蕩う物語
ヒューゴが言うように、ヒクサクとヴェルハルトは会話を終わらせ、女官や兵を引き連れ宮殿内に入っていく。セレスティアもヒクサクと何かしらの会話をしつつ中に入っていく。

その様子を見た他の来賓の人々も、次々と宮殿内に入り、式典の来賓席の場所に赴こうとしていた。

ヒューゴとシャロンは、人の流れが収まるのを待ってから宮殿内に入っていき、宮殿内で道案内をしている女官の一人に見覚えがあったヒューゴは、その女官に声をかける。

「シズネさん。道案内を頼めますか?」

「はい。ヒューゴ様っ?これは失礼致しました。エストール宮殿によくぞ参られました」

セレスティアとの謁見の折に会ったシズネは、ヒューゴの姿を見ると、深々と頭を下げる。

「それにしても宮殿内がこれだけ人で溢れるのも久しぶりじゃないかい?」

「はい。私が宮勤めをさせて頂いてからは初めてでございます。流石にシャオシール家の御当主であらせられるヒューゴ様でございますね…これほどの美貌を誇る奥方がいらっしゃるとは知りませんでした」

そう言うとシズネは、シャロンにも頭を下げてみせる。ここからはお決まりのシャロンが冷静に訂正を入れ、ヒューゴが笑って見守る展開だ。

そうして会話もそこそこにヒューゴとシャロンは、宮殿内の式典会場に向かうことになる。

式典の会場になるのは、エストール宮殿の中でも一番広い中庭を誇る場所で、普段は老臣やランディス国王陛下などがお茶を楽しんだり、宮殿に招いた大道芸人などが持ち前の技術を披露したりと憩いの場として機能している場所だ。

歌が好きなランディス国王陛下が、たまにセレスティアの唄声を聞くのにも利用したりしている。ヒューゴも何度かこの場所でセレスティアやヴェルハルトと会話をした記憶があった。

今はその場所に普段設置してある豪華な装飾のテーブルや椅子などは全てしまわれ、中央に広い空間を設け、それを囲むように小さなテーブルとイスが複数用意されている。

奥には王族が座る為の席が設けられ、ランディス国王陛下とセレス王妃とヴェルハルト王子とセレスティア姫の席であろう豪華な装飾のされた席が設けてある。
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