執事と共に謎解きを。
「最初、薬箱の位置が変っているときにおかしいと思った。その時点でお前が持ち出そうとしたんだろうが内側から空けられない扉にてこずったんだろう」

「ご名答。外から人に押さえさせても駄目なんだなその扉」

「けど、チャンスはあっさりやってきた。最初のお茶会のあとお嬢様がベランダで考え事を、私がお茶を入れてるときに薬を盗んだ」

「そ。でも、さすがに二回目は?」

「庭師さんは、お屋敷に勤めているけど、実質はレミコ様に雇われているわよね」

「それが?」

「ってことは、休みの申請は貴方が受け取っているはずよ」

「そうだね」

「休みの日に、貴方はこの部屋から薬を盗んで庭に逃げた。私と庭でばったり会ったときにね」

「やっぱばれてたかー」

「その時は嘘をついてることには気づいたけど、薬のことまで気づかなかったわ。気づいたのは、その後私の部屋に来たとき」

「お嬢さんが泣いてた時ね」

「その時、貴方は給湯スペースを知っているはずなのに知らないフリをしてベランダの鍵を閉めた」

「……泣いてたから油断してたけど、良く見てたのね」

「そして、抱きしめてくれたときの香水で確信したのよ。シャネルの5番はレミコさんのそばにいる貴方だって」

「女って怖いなー」


夏樹は相変わらずふざけたようにクローゼットの中で膝を抱えた。
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