ある17歳における不明瞭な愛についての考察
千往はきょろきょろとせわしなく辺りを伺う。
遠くの空で、割れた雲の隙間から金色の帯がこぼれ落ちていた。
相変わらず風は強い。
「じゃあ、しょーがないね」
ぼそりと呟きながら軽く俯いた千往の横顔は、少し赤くなっていた…そんな気がした。
刺すような寒さ以外の理由の有無なんて、その時の俺には考えもつかなかった。
その横顔がぎゅっと強張っていた理由も。
千往の勝負の理由も。
──俺の視界の中で、傷みが原因のわりに綺麗な色をした焦げ茶の髪が踊るまで。
「……え…!?」
それは本当に一瞬の、夢だと言われたら許容してしまいそうな出来事で。
事実を咀嚼して飲み込んだ頃には、赤信号を無視した千往が車の間を縫って向こうへ渡り終わっていた。
「…スタートっ!!」
これが千往のスタートの合図。
そして俺は、千往を捕まえなきゃならない。
────あいつに、キス、された。