ある17歳における不明瞭な愛についての考察
「───なぁ、ちゆき?」
有斗の声は少し擦れていた。
じわじわと耳の奥に突き抜ける低音があたしの芯を叩くような。
「な、に…?」
「聞きたい」
有斗の机を囲んで、あたしと有斗の距離は40センチ。
有斗は自分の座る椅子ごと、あたしに向き直った。
かち、かち、かち
時計の音と重なっていたハズのあたしの鼓動は、もうとっくに速くなってズレていて。
「ちゆきから聞かせて」
人間が言葉を喋る動物じゃなかったらいいのに───
なんて、切羽詰まった事態の中で思うあたし。
だって、ありと、そんなキャラじゃないじゃんか。
まるで漫画の中の人みたいなことを有斗がさらっと言ってのけるから、少しだけ驚いた。
有斗は男の子なんだな
って、はじめて思った。