「ワタリガラス」


朝がやってきました。

昨日よりも早く少女がやってきます。パンを沢山持っていました。

少女は優しく、大きいパンをワタリガラスに分けてくれました。


「美味しい?」

「・・・。」

「美味しい、かぁ・・・。良かった!」

「・・・。」

「どこから来たの?」

「北のほうから。」

「ふぅん。北には何があるの?」

「寒い場所。雪があるだけよ。」

「雪かぁ・・・。ふぅん・・・。」

「・・・。」


まだまだ、この少女には謎が多くて。話していてもいいものかどうか迷っていました。

なんで近づいてくるんだろう。

なんで話しかけてくるんだろう。

そんなことを思っていました。

ワタリガラスには、この少女の温もりが恐ろしく感じられたのでした。



昼になりました。

ワタリガラスがいるので、公園には誰もやってきません。

少女はそれを知っているのでしょうか。分からないのですが、聞く気にもなれません。

この関係が終わってしまいそうだ、と思って。

それに、この関係が終わってしまったら、どうなるのだというのでしょう。

以前と変わらない暮らしが待っているだけなのに。現実がそこに佇(たたず)んでいるだけなのに。奇妙に思いました。


「・・・。」

「今日はゆっくりしていられるから。夜まで一緒にいようね。」

「・・・。」

「ねーねー。」

「なに?」

「身体。触ってもいい?」

「・・・場所によるわ。」

「やったっ!」


少女は翼に優しく触れました。くすぐったくて柔らかい少女の手です。

温もりを持った手が触れました。


ワタリガラスは何も言わずに撫でられています。相変わらず、ワタリガラスは空を見上げていました。


今日の天気は曇りです。いつか、この雲は晴れるのでしょうか。ワタリガラスにも分からない事です。

でも、きっと。少女なら。


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