「ワタリガラス」
翌朝。
ワタリガラスは依然として同じ場所にいます。
微笑を忘れてしまった彼女に、早速あの少女がやってきました。何かを持っています。
「パン、食べる?」
「・・・。」
「・・・パン、食べない?」
「・・・大きいほうをちょうだい。」
「はい!」
にこにこと、石ではなくパンをくれました。
ワタリガラスにはわけの分からないことでした。この少女はどうして優しくしてくれるのだろう。
そんなことを考えていました。そして。
自分はその優しさを素直に受け入れる事ができないのでした。
きっと、何か裏があるに違いない。
このパンに、もしかしたら毒が混じってるかもしれない。
それならそれでも良かったのですが。
死んでしまったとしても。
もし、そうだとしても、一向に構わなかったのです。理由なんてありません。
死んでいても生きていても、大差ないと考えていたからです。
パンを全部食べ終えました。
少女もパンを食べていました。
ワタリガラスよりも小さなパンのかけら。しかし、彼女は食べるのが遅かったのです。
ようやっと全部食べ終えて。少女は言いました。
「キミは、なんていう鳥なの?」
「・・・。」
「ねぇ・・・。」
「ワタリガラス。」
「わたりがらす?」
「そう。あたしは、それ。」
「ふぅん。知らない鳥だ・・・。」
「そうよね。あたしみたいな鳥は、珍しいから。」
「そうなんだぁ~。」
「・・・。」
「名前は?」
「・・・え?」
「あなたの名前。」