Honey Sweet Melody

「では先生、自己紹介をお願いします。」
「あ、はい。天海飛勇といいます。担当科目が音楽なので、授業では全員と関わるということは出来ないかもしれませんが、学校行事や生活面等でたくさんこのクラスと関わることが出来たらよいと考えています。皆さん、どうぞよろしくお願いします。」
　
　軽く下げられた頭に、髪が揺れた。顔を上げた先にある柔らかい笑みに、一部の女子が色めき立つ。

「それじゃあ自己紹介はこの辺にして、このプリントの配布を手伝ってもらえるかしら？」
「はい。」

　丁寧にプリントを配り始める先生を、華音はずっと見つめていた。時折不意に目が合って、微笑まれる。その度に、胸がきゅっと苦しくなる。

「1枚目のプリントを見てくださいね…。」

　宮野の説明が始まった。しかし、宮野の声が心地よくて、華音はいつの間にか目を閉じていた。


＊　＊　＊

「…のんさん…華音さん。」
「…へ？」
「アンケートを出していただけますか？」
「え？」

　顔を上げると、華音の目の前に天海飛勇がいた。

「っ…先生なんでこの前…！」
「華音さん。」

　大声を出そうと思ったのに、それは先生のやや低めの声に遮られた。

「とりあえずアンケート用紙を提出していただいても構いませんか？」
「へ？アンケート？」
「そうです。あ、まだ白紙のようですね。待ちますから、ささっと書いてもらえますか？」
「えっ…あ…うん。」

　先生は華音の斜め前に立って外を眺めている。その姿が様になってて少しだけ悔しい。

「できた！はい。」
「ありがとうございます。」
「っていうか先生、暇なのよね？」
「え？」
「ちょっと話があるんだけど。」
「え…あ、華音さん？」

　華音は先生の右腕を掴んだ。そのまま、屋上に連れていく。