駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
ゼェハァと息が上がっていたのは矢央一人で、結局は山崎が勝った。
もうどうにでもなれ、とやけくそ気味で松本に診察してもらう。
「不調なとこはないかね?」
「元気です!」
「元気すぎで困ります」
松本の診察結果をメモる山崎を、鋭く睨む矢央。
じっと見ていると、顔を上げた山崎はフッと鼻で笑った。
「元気すぎることに越したことはないよ。 よし、間島君も健康体っと」
診察を終え、乱れた服を直していた矢央は、松本の表情が浮かない事に気が付いた。
それは山崎も同じで、どうしたかと尋ねると、松本は椅子から立ち上がり開いていた小窓を閉める。
どうやら聞かれたくない話だと察した二人は、佇まいを直した。
「救護隊の君達には話しておこうと思う」
二人は顔を見合わせる。
「私はね、時々思うことがある。 医者としてより多くの人を救いたいと思ってはいるが、今の医学では治せない病に遭遇することが多くてね、いかに己が無力なのかと、その度に思うのだよ」
「松本先生?」
袖を握りしめる手が痛々しくて、矢央は心配そうに声をかけた。
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