駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「貴女には無理です。 新撰組で真剣を持つということは、人を斬る人の命を奪うことになります。
他人の命を守りたいという貴女には、真剣の重さに耐えられなくなる」
「そう言われると思いました」
剣術を習えば、いつか必ず真剣を持つ時がやってきて、真剣を持ち戦に出れば、いくら人を斬りたくないと言えど、守るために殺める時が来る。
人の命を奪う時、沖田は己の刀に重さが加わるのを感じていた。
命の重さが彼等を強くするが、やはり女である矢央には手を血で染めてほしくない。
「止めておきます」
「そうですか。 でもまあ、剣術は精神統一にもなるので、たまには良いと思いますよ」
「じゃあ、今度チャンバラごっこでもしましょうよ!」
「チャンバラですか」
「勝ちますからね!」
「おやおや、強気ですねぇ。 遊びと言えど、私は負けませんよ」
道場に笑い声が響く。
きっと、沖田は気付いているのだろう。
矢央が落ち込んでいることを。
沖田の優しさに、夕陽を眺める矢央はいつもの笑顔を取り戻していた。
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