駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

声にならない声で痛みを我慢する永倉の傍で、一人慌てる矢央。


「ちょっ…大丈夫ですか!?」


癖のある柔らかい髪が首筋をくすぐり、心配しながらも顔はにわかに笑みを浮かべていた。


「だ…丈夫。 これしきで、この永倉様がっ!」


ふんっ! と、鼻から息を吐き出し勢い良く起き上がってみたが、腰に電流が流れたような痛みを感じ、また力を抜き元の位置に戻る。


腰を鍛えなくてはならないな、と改めて永倉が思っていると、原田は相変わらずニヤケ顔のままだ。



「…ンだよ。 何が可笑しい?」

「いやぁよぉ、夫婦にも見えなくねぇが、お前等だとまだ兄妹が良いとこか…てな!」

「兄妹? あ〜…でも、確かに永倉さんはお兄ちゃんっぽいかも」


ようやく解放され、また畳に伏せた永倉の背中を揉んでやりながら想像する。


「……俺は、お前みたいな妹いらん」

「ひどっ!!」


明日の稽古は様子をみながらやるしかない、と明日の予定を考えていた永倉が一瞬の間を開けて言った台詞に矢央は傷付いたと訴えるが、


「ンなこと言われてもよ、矢央は妹じゃねぇからな」


と、至極当たり前なことを言って瞼を閉じた。


それに対し、原田の 「真面目だねぇ」 と言う皮肉めいた言い回しに 「取り柄だろ」 と、即答した。


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