駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

生きた時代が違うために、性格だけが多少違うが、真っ直ぐさは変わらない。

そんな矢央に、好意を抱いてしまった沖田の告白。


「私はね、あなたが今もこれからもその明るさを無くさず幸せに生きてくれたらいいと思ってます。 この想いを打ち明けて、あなたと恋仲になりたいとは願いませんよ」



明らかに戸惑っている矢央を見て、沖田は目を伏せた。


その視界に映る小さな手を取ると、己の手を合わせ、指一つ一つで繋がろうとする。


「お、きたさん…」


指の隙間に己のものとは違う温もりが重なり、ドキドキと落ち着かない。


「私があなたを好きだと言ったのは、あなたに分かってほしかった。 これから時代は私達がゆっくり落ち着いて話せるような時代ではなくなるかもしれない」


会いたくても会えなくなるかもしれない。


仲間だった相手が、明日には敵となるかもしれない。


今日ある命が、明日はないかもしれない。


「だからこそ、今この時一瞬一瞬を悔いのないように過ごしてほしいのです。 矢央さんの心の中にある想い、悔いのないように」

「………」

「昨日までは、何ともなかった異性が突然何かの拍子で気になるとかあるようですからね。 例えば、相手に恋人が出来たと聞いた時など」


未だに額をくっつけたまま、沖田はニコッと悪戯っ子のような瞳を矢央に向ける。


すると顔を赤くして眉を寄せる、これまでに見たことない表情の矢央を見てある衝動がおさえられない。


「どうしましようか。 私と一緒になることはあなたの幸せにはならない。 あなたを残して先に逝ってしまうだろう私が、あなたと…こんなことを望んではいけないんですよね……」


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