駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
その人を見つけた時、というのは沖田にも恋しく思える人がいるというわけになる。
一瞬誰だろうと思った矢央だったが、すぐに脳裏に彼女の姿が浮かんできた。
お華さんか……。
「矢央さんにもいませんか? その人を見ると触れてみたいと思う人は」
急に振られて、ゴクンと飲み込んだ芋を喉に詰まらせかける。
ゴホッ!と咳き込む矢央の背中を沖田の細い手が撫でていると、原田はあることに気が付いた。
苦しげな矢央を、穏やかな眼差しで見つめながら介抱するその姿はまるで、
(総司のヤツ、もしかしてとっくに吹っ切ってんのか?)
「う〜ん。 となると、平助には部が悪いかも?」
一人ぶつぶつ呟く原田には目もくれず、矢央は沖田の言葉を真面目に考えていた。
モヤモヤとした頭の中に、見えそうで見えない男性の背中が僅かな時だが浮かんだ…ような気がした。
「…………」
「どうやら思い当たるとこがあるようですね?」
「ふえっ? いやいや、いないですよっ」
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