駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「小姓さん、ですか?」
「は、はいっ。 先日入隊しました、市村鉄之助と申します!!」
そう言えば四月の終わり、新入隊士がぞろぞろと庭先に集まっていた。
それは配属先の発表で、この市村という少年は新撰組副長の小姓に配属されたのだ。
「人使いが荒いらしいからな? この際、専属の小姓をつけさせてもらった」
方眉を上げた土方。
矢央の口許がヒクヒクと動いた。
沖田にチクられた、と肩を下ろす矢央を見て市村が声を掛ける。
「あのっ、お茶不味かったですか? 僕、あまりいれなれてなくて…」
自分の掌に包まれたままの湯呑みと市村の顔を交互に見て、ああそうかと笑みを浮かべる。
「大丈夫。 貴方のお茶が不味くて、とかじゃないですから」
沖田のせいだ。沖田の。
後で仕返しをしてやろうと密かに企みながら、もう一度市村を見つめる。