駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

不安げに矢央の顔を伺う市村は、聞けばまだ十四だと言う。


こんな若い少年が自ら新撰組に入隊してきたのか、と眉を下げる矢央。



「これでお前もお役目御免だ」


その表情の意味をどう取ったのか土方は、市村のいれたお茶を飲みピタッと動きを止めた。



「あ、やば…」


次に土方が言う言葉が何故か読み取れてしまい発せられた言葉を聞いた市村は、何事かと恐る恐る土方を見やる。



トンと湯呑みを置き、ふうと一息吐くとギロッと鋭い視線で市村を脅かしている。



「…市村、温い。 入れ直してこい」


「ひっ! は、はいっ、今すぐ!」



半泣き状態で御盆を胸に抱えて部屋を飛び出して行く市村を、湯呑みに口を付けながら横目にちらりと見て思った。



土方さんは、熱すぎる位で丁度良い。




「なに笑ってやがる?」

「丁度良いのになあって」

「いいや、温い」

「はいはい」






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