駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
矢央の背後に迫っていた男達が矢央に刀を向け飛んで来るのを、瞬時に矢央を背に隠した藤堂が応戦すれば、いつの間にかぞろそろと敵に囲まれていた。
熊木の仕業と悟り、矢央が男達を見れば、やはり表情がだらしなくなっていて操られていると分かった。
こんな大勢も操れる熊木の力は、きっとあのお華を超えているんじゃないかというほどだ。
「私も戦いますっ!」
三人に囲まれるようにして立っていた矢央は叫んだ。
が、誰一人答えないのは、それ程余裕がないのか?
「っ!! 永倉さんっ!?」
四人の相手をしていた永倉の背が矢央にぶつかり止まるとチと舌打ちする。
永倉を支えるように背後から腕を掴み、その時見えた永倉の刀に違和感を覚えた。
ところどころ刃こぼれしているらしい。
「くそっ! こんな人数相手にしてりゃガタがくるのも早ぇな」
血を吸い過ぎて斬り味も悪くなっているらしく、使い物にならなくなった刀を悔しそうに投げだした時、前方から二人が襲いかかった。
が、永倉は矢央の刀を素早く奪うと、自分の脇差と共に両腕を使い二人を突き刺していた。
凄い早業に、直ぐ傍で見ていた矢央は言葉すら出ない。
「刀借りるぞ? つうわけだから、お前は大人しくしとけ」
何故か笑っていた。
右を見れば原田が頭上でブンブンと槍を回し声を上げると、右手に槍を持ち構え一気に下へと斬り込んだ。
「こんな雑魚ばかりで、俺達がやれると思ってんのかあぁっ!!」
「は! 本当…本当その通りだねっ! 僕達三人を誰だと思ってんだかっ!!」
藤堂の声に振り返れば、男達に突っ込んでいきながら左右の男達をあっさり斬り捨てていく藤堂に驚く。
唖然と立ち尽くし、その様子を見ながら心は恐怖するどころか嬉々している。
永倉、原田、藤堂が共に戦う姿を、また見られるとは思っていなかった。
状況は良くなくても、人が傷つく現実は変わらなくても、それでも目の前で三人が互いの背中を守りながら戦う姿に嬉しくならずにはいられない。
此処を片付け屯所に戻って、皆が揃えば全て上手くいくんだと矢央は思っていた。