駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
矢央の中に芽生えた確かな気持ちを伝えていいものなのか。
お互いに昨日大切な仲間を失ったばかりで、表向きは何も無いと振る舞う新選組も、裏ではその対処に慌ただしく動いている者達も少なくない。
それぞれに傷を負っている今の状況や、熊木に言われことが引っかかり素直になれない。
「…近いうち、左之も連れて平助の墓参りに行くか」
言い躊躇っている内に永倉によって話題は変えられてしまい、何も言えなくなってしまう。
「…はい」
「お前が行けば、あいつは喜ぶ」
「それは永倉さん達でもですよ」
二人にとって本当に大切な存在だった藤堂。
その藤堂を失ってしまい、二人の間には恋焦がれるのとは、また違った想いも生まれている。
藤堂に想いを寄せられていた矢央、友が想いを寄せていた女子。
永倉から大切な仲間を奪ってしまったと感じている矢央。
互いに藤堂平助という亡き仲間への想いが、二人の間に僅かな躊躇いを生んでいた。