駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
熱い視線が絡み合い、互いの心臓の音だけが響く静かな空間。
矢央の頬に触れている手をそっと動かすと、くすぐったいのか身を震わせる。
「本当にいいのか?」
止めるなら今だぞ、と真剣な双眸で見やると矢央は小さく頷く。
「いいんです。新八さんだから…私、わたっ」
最後まで言い終わる前に、永倉の唇で唇を塞がれて何も言えなくなった。
貪るような熱い口付けに目眩を起こしそうだ。
「…んっ…はあっう…」
角度を変えては塞がれ、息が上がる。
うっすらと瞳には涙が滲み、苦しくて永倉の着物に縋った。
「しん…ひゃっ…」
やっと口付けが終わったと思えば、熱い舌で首筋を舐められ身体がビクッと魚のように跳ねる。
こんな感覚は知らない。
胸を焦がすような痛いような、むず痒くて身体全体が熱かった。
恥ずかしくて唇を噛んで顔を背けると、永倉の指が口の中に侵入して甘い息を漏らしてしまう。
「我慢しねえで、聞かせろよ」
耳元で低い声で囁かれ、腰にズンと言いようのない感覚が襲い、矢央はとうとう涙を流した。
「こうなる時は覚悟しとけって言っただろ。今更逃がさねぇよ」
「ふぅっ…んむっ…」
指を咥えさせられたままでは、まともな抗議すらできない。
永倉を睨もうと目が合うと、永倉の双眸は見たこともないくらい熱に魘され少し潤んでいた。
ーーーートクンッ。
「矢央…俺を忘れるな…お前の記憶にも、この身体にも俺を残したい」
気付けばいつの間にか着物は脱がされ、矢央の上に跨がっていた永倉は上体を起こし自身も着物を脱いでいく。
行灯に照らされて、均等についた筋肉質な身体が視界に映り、ほんのりとかいた汗で張り付いた首筋の髪が妙な色香を漂わせていた。