駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
原田と永倉の視線を一斉に浴びせられた藤堂は、肩を落とし渋々立ち上がる。
その時、藤堂の視界に風にヒラリと靡く黒髪が見えた。
「一君! あ、新八さん左之さん、一君だっているぜ!?」
「…俺がなにか?」
稽古の後、自室に戻ろうと通りかかった斉藤は、何故藤堂に指を指されているのか分からず立ち止まる。
「おお、斉藤か。 いやな、買い出しに行く奴を決めてんだよ」
「買い出し。 ああ、副長がそう言えば…」
振り返った原田は、斉藤の肩を叩き説明する。
若干鬱陶しそうに表情を固める斉藤を見て、矢央は小さく唸ってみせた。
それに気付いた永倉は 「どうした?」 と、尋ねれば、矢央は藤堂と斉藤を交互に見つめ。
「平助さんがなんで斉藤さんを指名するのか分からなくて」
「「「え…」」」
見事に斉藤以外の三人の声がハモった。
「もしかして矢央ちゃん、僕が一番年下だと思ってるとか?」
「違うの?」
「いやあ違わないんだけど…」
可笑しなことを聞くなと言いたげに、矢央は首を傾げた。
それに対し藤堂は、二度目の肩を落とし、永倉と原田はクックッと笑っている。
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