駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「原田さんが照れてるとこ初めて見ちゃった! 大好きなんですね、おまささんのこと」



以前、沖田と後を着けた時に一度だけ会ったおまさのことを思い出す。

原田が島原で隣に座らせる芸妓は誰もが美人系の派手な女性と聞くが、おまさは正反対の可愛くて地味な感じだった。



「…あいつは、幸せにしてやりたいと思ってる」

「…そうですか。 原田さんとなら、きっと今も幸せだと思ってくれてると思いますよ」


愛しげに微笑む原田の横顔を見ていれば分かる。

彼女をどれ程愛しているのか。


「なぁんだ、てめぇらぁ〜? 二人してコソコソとぉ〜」

「うをっ! 新八っおもっ!」


気配を忍ばせ、いつの間にか原田の隣に立っていた永倉に、頭から押さえつけられ原田は顔を歪ませる。


そして矢央の方には、鉢巻きを頭に巻いた酔っぱらいの藤堂。


「左之さぁぁん、浮気は駄目だよ〜? 浮気はぁぁぁっ」

「は? 誰がだよっ?」

「矢央ちゃんは、僕のなんだからねっ!!」

「「……」」



原田の首に巻き付いていた永倉の腕の力が緩み、互いにチラッと目線だけを合わせた。

今何気に凄いことを言ったのではないか、と頬を膨らませた。


「プッ! へーすけっ、おまっえらく大胆だな?」

「へ?」

「だって、なあ? 新八?」

「おう。"矢央ちゃんは、僕の"発言だもんよ」

「………」


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