駆け抜けた少女ー二幕ー【完】


「だなー…。 それで、楽観的な近藤さんがビシッと一言言うと、案外あっさり納得したりしてたっけ」


ズズズと茶を飲む永倉の隣では、矢央が新しくいれた茶を斎藤に渡す。

その茶をジッと見つめる斎藤に気付き、隣の沖田が湯飲みの中を覗いて 「あ、茶柱!」 と、盛り上がっている。



「そうそう。 こんな時こそ、昔みてぇに近藤さんが、ドンッと背中を押してやらぁいいのによ」

「局長は今、伊東参謀につきっきりだ」

「伊東先生は凄い人だけど……こんな時だけは山南さんに気を回してくれてもいいのに…」

「連れて来た平助が言うな」

「うっ……」



日が暮れ始めたというのに、山南の部屋には灯りは灯らない。

立ち上がった矢央は 「山南さんにもお茶を持っていこ」 と、お盆に湯飲みを乗せて部屋へと向かった。



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