チューリップ
プロローグ
例えば、ホールケーキとその他の荷物を一緒に持って電車に乗る緊張感に比べたら、

二股かけるなんてなんでもない。

壊れやすさが同じなら。

笑った顔を盾にして、なにかを守るのは、すごく疲れる。

でもね、みんな同じ淋しさの場所から、少しずつ抜け出していくんだ。

あの人も、あたしも、同じベッドで眠ったはずの女の人も。

それは、気が遠くなるような日々に思えるけれど、

少しずつ、一日ずつ、悲しみを忘れていく。

いつかまた、だれかと並んで歯を磨くような朝が来るといい。

そう信じて。
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