Voice



『代役なんて、絶対許さない!』








えっ…。







『梓、何を言って…』






『メロディの

ピアノ伴奏は美紀なんだ!


代役なんて、


社長が許しても、


俺が絶対に許さない。




渋滞だろうが、

何だろうが、

絶対に来い!』










…喪失感。






胸の中で

ぽっかりと開いてしまった所が、



梓の言葉で、

じわじわと

温かな何かが湧いてくる気がした。







『な、

何を言ってるんだ!梓!


美紀ちゃんは、

今さっきまで、

Vo…じゃなくて、

大切な仕事をしていたんだよ!



美紀ちゃん、

無理して来なくても大丈夫だからね!


美紀ちゃん?聞こえ…』







"ブチッ"






切ると同時に

携帯を

座席に置いて、

車のドアを開けた。








「美紀!何が…」




遠夜が、

腕を掴んで

何か言おうとしていた。



けど、

私は…。






「…私、行かなきゃ。」






遠夜の

掴んでいた手を離して、

外へ飛び出した。




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