Voice




「…俺は、

本当の事を言ったまでだ。





本気じゃないなら、

今すぐ、この車から降りろ。」









「梓!!」








遠夜は、

私をフォローしようと

してくれたんだと思う。





でも、

私の手は勝手に止めていた。







「遠夜。もういいの。」







私は、

遠夜に作り笑いを見せた。








「でも…。」








遠夜。




ありがとう。


私は、梓と向き合い、頭を下げた。








「すみませんでした。

確かに

さっきは、気を緩めていて、

車に乗り損ねそうになり、


あなたが、手を引いてくれなかったら、

ここには、いなかったでしょう。」








梓は、私を睨んでいた。




私は、

その目をそらすことなく、

見つめて話し続けた。








「そんな私を、

自覚が無いとか、

オーラが無いって、

言いたいのも、よくわかった。




だから、

謝って礼を言っておきます。





…でもね。


一つだけ言わせてもらう。






確かに、

あなたはプロとしてのプライドが、

高いみたいだし、




実際に少しは売れてるらしいけど…。







プロなんだったら、

もう少し、余裕を持ったらどう?

一つの失敗が、

”命取り”な仕事っていうのはわかる。




でも、

プロの音楽家なら、

どんな時も冷静でフォローし、



何事も無かったかのように、

振る舞うものでしょ?」






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