ひみつのはら

 挨拶以外の、さっちゃんが話しかけて来た最初の一言。

 思わず驚いてさっちゃんを見た。

「何でおはなししないで無視するの?先生とはするのに。わたるくんずーっと『おはなしする』っておはなししようとしてるのに、ずーっと頑張ってたのに、たっくんが無視するから泣いちゃったんだよ?」

 睨んでるさっちゃんの後ろに、そのわたるくんがいた。みんなに「泣かないで」と励まされていた。

 ―――なんでボクが悪いの?わたるくんが勝手に泣いただけじゃん。

 その泣き顔が、余計にいらっとした。

「あやまんなさいっ!」

 見ているのもいやになって、何も言わずにその場を離れた。……かったんだけど……。

「いいかげんにしろォォォォォッ!!」

 さっちゃんの声は、きっと幼稚園全体に響いただろうな。

 ビクッと立ち止まった瞬間、さっちゃんは殴りかかってきた。

 ―――な、なんで関係ない桜ちゃんが怒るの!?

 その後お互い取っ組み合いになって、先生が来て、もう一声幼稚園全体に響いた。

「いい加減にしなさァァァァァいッ!!!」



「あらら、それでこの傷ね」

 幼稚園が終わってチューリップ組に来たボクとさっちゃんは、ぶすっとして目も合わさなかった。

 飛鳥先生はバンソウコウだらけのボク達を見て、慌てて担任に聞いたのだった。

「先に手を出したのはどっちかな?」

 さんざん怒られて、またまたセッキョウ。

 疲れてるのに、痛いのに、怖いのに。

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